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雑誌『フォトタイムス』とモダーンフォト(1) [落合]

 オリエンタル寫眞工業が落合・葛ヶ谷において出版していた雑誌『フォトタイムス』はいちはやく新興写真の動きを紹介、誌面に「モダーンフォトセクション」というコーナーを設けた。『フォトタイムス』はプロの写真館の写真技師を読者の主な対象としているところがあり、肖像写真の撮影技術等も紹介しているが、その一方で世界的に始まっていた新興写真の動きをほぼ同時代的にフォローしようとしており、日本におけるモダーンフォト、新興写真運動を先取りして紹介した雑誌としても特筆すべきである。その萌芽は1929(昭和4)年3月にある。『フォトタイムス』にはモダーンフォトセクションが新設され、村山知義や堀野正雄などを協會員とした國際光畫協會が上落合に創立される。このとき、『フォトタイムス』編集主筆である木村專一は30歳であった。1929(昭和4)年4月号では堀野正雄が「國際光畫協會 第一囘展覧會に際して」と題して國際光畫協會展を紹介している。展覧会は2月15日~23日まで新宿紀伊国屋書店階上で開催された。この展覧会はいわゆる「写真展」とはまったく異なっていた。それは展示内容に関する堀野正雄による以下の記述をみると明らかである。

印刷に利用すべき商業寫眞の實例、ソヴェツト・ロシアの宣傳ポスターを我々は諸君に齎らした。全世界映畫界の鬼才エイゼン・シュタインの『十月』のポスター。寫眞を實用化した良き例證である。一時間に十一吋×十四吋大のものが弐千枚以上以上弐千五百枚の生産能力を有する高速度輪轉焼付寫眞の實例。G・T・SUN商會の出品である。我々の日常生活に最も密接なる關係あるニュース・フォトとして東京朝日・日日新聞社の出品。カメラ無しで複寫し得るオリエンタル製品のコマーシャル・ペーパーの操作工程の具體化を此の機會に我々は展覧することを得た。

写真の単独作品を展示する形式の展覧会でないことがよくわかる。あきらかに新しいメディアとしての「写真」を紹介しようとしている。さらに加えて、映画技術についても展覧内容に加えており、映写幕、活動写真撮影用の電球などについても言及している。写真のメディア性を前提とした展覧会を開催している点で世界同時代的にも新しい。また、それを堀野正雄に書かせた『フォトタイムス』編集部もまた新しい。そもそも國際光畫協会の顧問に木村專一とオリエンタル寫眞工業の常務取締役技師長である菊地東陽の二人は就任していたのだった。第二囘展は4月5日~11日まで東京朝日新聞社展覧會場で開催された。5月号では主筆の木村專一が「フオトグラムの製作と其の感想」をモダーンフォトセクションに書いている。モーリーナギー(木村の記載の通り)を先例として参考にし、木村自身が実際にフォトグラムを製作している。6月号では木村はさらにフォトグラムを研究、文字を加えて立派に廣告デザインの役目を果たすであろう、グラビア印刷によってポスターにするならば、在來の形式を打破したポスターを得ることができる、としている。木村もまた写真を単独の芸術作品として必ずしも見ず、メディアにつながる構成要素として見ている点が興味深く、また写真のもつマルチプル性を積極的に評価している点も興味深い。9月号のモダーンフォトセクションにおいて木村はモーリーナギーの写真作品とフォトモンタージュの作品をあらたな表現手法として評価している。商業写真におけるフォトモンタージュの可能性について言及していることも注目すべきであろう。10月号では堀野正雄が「映畫・印刷・寫眞」というエッセーを書いている。そこではスチール写真だけではなく、エイゼンシュテインが取り上げられ、「ポチョムキン」の1カットが紹介される。そして、繰り返し「映畫・印刷・寫眞です。」が強調されるのだ。ここでも大衆に流布させるメディアとしての特性をもつ写真が取り上げられている。『フォトタイムス』が志向したモダーンフォトの姿は、単独の写真という表現作品としてではなく、メディア化する写真の可能性の拡大にあったように思う。この号のモダーンフォトセクションの最後に「記者附記」があるので、引用しておく。

モダーンフォトセクションも、既に八回重ねて参りました。大体に於てこの欄が如何なるものであるかは、御了解下さつた事と存じます。併し、未だ難意に解釈してゐる方がある様に思ひますが、要するに、何物にも拘束されない處の眞に自由な寫眞の紹介・批評・又は各作家の主張・作畫法等の為に、出來るだけ多方面の寫眞家に、使用して頂きたいのであります。何卒御寄稿を願います。
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