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メールアートとは [メールアート]

※YOUプロジェクトのリンクにメールアート解説が必要なので4月15日までこの記事を最新にしておきます。そのため、更新を中止します。※
1.メールアートって何ですか?

 「メール」と聞くと、多くの方は「eメール」を想像してしまうと思うけれど、メールアートの「メール」は郵便のメールです。つまり、メールアートとは何らかの形で郵便システムを使うアートのこと。英語ではイーメールと区別するために「スネイルメール」という呼び方もします。かたつむり郵便さんという可愛い呼び名。

 たとえば、通常は絵画は美術館やギャラリーに展示してあって、その場所に見にゆくものだけれど、美術作品が郵便システムを通じて勝手にやってくる。作家側にたてば、見せたい相手だけに直接的に見てもらえる仕組みということになる。あえて比喩的にいえば、個人のメールボックスが美術館、ギャラリーとなるわけ。イーメールと決定的に異なる点は、素材をそのままの形で送ることができる点。結構ドキッとさせられるようなデザインやアイディアで作品が届く。

がいこつ郵便.jpg
YOSIO TAKEDAさんからの「平和」はがき。裏に住所・名前が書かれて切手が貼ってある。この形状のまま郵便ボックスに入っていた。

ダイスラーの本.jpg
チリ出身でドイツへ亡命して美術大学で教鞭をとっていたGuillermo Deislerさんの本。18枚の世界中から届いた観光絵葉書を目の形にカットして製本したもの。裏にサインが入っている。死後、チリの大学にアーカイブができたようだ。

封筒ダニエラさん.jpg
フランスのDanielle Dénouetteさんからの封筒。

2.メールアートとの出会い

 1980年代の前半、雑誌「ブルータス」の美術コラムにイタリアのカベリーニが紹介された。カベリーニがメールアートを行なっていて・・・という紹介で、興味を持ったが、どうすればいいのかわからず、カベリーニの住所もわからず、それきりになってしまった。
 次にメールアートについての記述に出会ったのは、嶋本昭三が1994年に出版した本『芸術とは、人を驚かせることである』(毎日新聞社)においてだった。この本の内容は大半をメールアートに割いていた。カベリーニについても書いてあるし、なによりメールアートにかかわるエピソードが面白かった。

嶋本昭三の本.jpg

 メールアートに俄然興味をもった私は、著者である嶋本昭三に手紙を書いた。手紙には乱暴なドローイングを添えた。これが私が初めて送ったメールアートである。
 5日くらいして、嶋本さんから返事がきた。彼から送られてきたのは、ダンボールを「あ」の形に切り抜いたハガキであり、表には住所と私の名前、裏には直筆で「メールアート・ネットワーキングに是非参加ください」と書いてあった。次に私はカラスのドローイングをパウチして切り抜き、ハガキにして返事を書いた。こうして嶋本さんとのメールのやりとりを3往復くらい行い、ネットワークを広げた。嶋本さんは私にリサイクルの封筒で送ってきていた。つまり海外のメールアーティストの住所と名前が記載されたままなのだった。そうか、これを使ってネットワークを作ってみたら、というメッセージなんだなと解釈して送り始めた。また、嶋本さんは「AU」という印刷物を送ってくれたが、そこには出版記念会にメッセージを寄せたメールアーティストの一覧を掲載していた。これも使った。

Miguel Jimenez (スペイン).jpg
スペインのMiguel Jimenezからの封筒

 その頃、ノートにコラージュ作品を作っていたので、これをカラーコピーして送った。30人くらいのメールアーティストに送っただろうか。当時は海外に郵便を送ったことがなく、どうしていいかわからず、手紙も添えていない。

Boog.jpg
アメリカのBOOGからのメールアート

 私が想像したよりも早く返事が届いた。初めて海外からもらったメールアートはスウェーデンからだった。相手は彫刻家。そして翌日も、その翌日もメールアートは届いた。切手や封筒の美しさにも魅かれた。こうして私のメールアートは始まった。

ハーゲンブロック.jpg
アメリカのJulie Hagen Blockの消しゴム版画によるメールアート

※メールアートについての文章は書肆啓祐堂発行の雑誌「黄金の馬車」2号から連載した。

黄金の馬車2号.jpg
「黄金の馬車」2号 2001年3月25日発行。造本は空中線書局の間奈美子さん。

3.自分のスタイルの発見

 メールアートの初期のやりとりの中、私にとって重要な二人のアーティストとの出会いがあった。一人はアイルランドの詩人のバリー・エドガー・ピルチャーであり、もう一人はチリ出身でドイツに亡命したギレルモ・ダイスラーである。
 ギレルモ・ダイスラーとは、嶋本昭三さんのネットワークにより知りあった。そして彼が発行している雑誌「ウニ/ヴェルス」を送ってもらった。そこには「ヴィジュアル・ポエトリーを作らない?作ったら、僕に送ってください。」という手紙が添えられていた。ヴィジュアル・ポエトリーって何?って思ったし、最初はどんなものか想像もできなかった。

Guillermo Deisler.jpg
Guillermo Deisler

 「ウニ/ヴェルス」には多くの作品が掲載されていた。それで、何となくこんなものかなと理解できた。みようみまねで作品を作り、彼に送った。35号にその作品は掲載された。でも36号が発行されることはなかった。ダイスラーの急死によって廃刊となったためである。

John M Benette.jpg
アメリカのJohn M Bennettのヴィジュアル・ポエトリー

 「ウニ/ヴェルス」への作品掲載がきっかけでセルビアで発行されている雑誌「シグナル」に作品が掲載された。「シグナル」は雑誌「VOU」にも紹介されており、北園克衛や清水俊彦も作品掲載されたヴィジュアル・ポエトリーに特化した雑誌である。河原温の作品が掲載されたこともある。私が掲載された同じ号にドイツのヴィジュアル詩人、ペーター・デンカー教授の作品が掲載され、その縁から手紙をいただいた。デンカー教授は、当時ハンブルグ市の文化事業関係の企画を担当されており、大阪市と姉妹都市にあるので、日本のビジュアル・ポエトリーをハンブルグ市で紹介したい、参加しないかという誘いだった。1997年1月に赤坂のドイツ文化センターでデンカー教授と会い、結果、97年5月から99年1月までの期間、ドイツとオーストリアを巡回展示された「日本ヴィジュアル・ポエジー展」に参加することになった。また、99年9月に北上市の日本現代詩歌文学館で開催された「日独ヴィジュアル・ポエトリー展」への参加につながった。ここで、多くの日本人のヴィジュアル詩人と会うことになった。私のアーティストとの出会いは、海外経由がどんどん多くなった。

「詩を視る」カタログ.jpg
日独ヴィジュアル・ポエトリー展のカタログ表紙

 アイルランドのバリーとも94年にメールのやりとりが始まった。彼は私のコラージュを気に入り、アイルランドの新聞や雑誌からの切り抜きを大量に送ってきた。それでコラージュを作ってみたら、という訳である。私はポストカードにコラージュしてバリーに送った。彼はそれを他のメールアーティストに送った。「何かこのポストカードにアクションを加え、日本の中村恵一に送るように」というコメントをつけて。つまり、ひとつのポストカードを3人のアーティストがコラボレートして作り上げるわけである。バリーがもっとも頻繁に送った先はフランスのブルーノ・スルディンだった。バリー+ブルーノ+ナカムラのコラボを私は「トライアングル・コラージュ」と名付けた。そして小冊子にした。

Triangle Collage.jpg

この小冊子はさまざまなメールアーティストのところに届けられ、その多くの方から「私も作りたい」との申し出となった。

Triangle Collage 2.jpg

結局、100冊以上のコラボレーション小冊子を発行することになった。20カ国以上のメールアーティストと共同制作した。いつのまにか、私のスタイルはコラージュ・コラボレーションということになっていった。

Triangle Collage 3.jpg

4.私のスタイル

 郵便によって素材を受け渡してのコラボレーション制作が私のスタイルとして各国のメールアーティストに認知されている。そのため、さまざまな形での提案をもらった。アイルランドの詩人バリー・エドガー・ピルチャーは"renga"を共同制作しようと言ってきた。最初何のことか理解できなかった。そうか「連歌」かとしばらくして気づいた。試しに英語で連歌を作ってみた。やはり難しかった。でも頑張って連歌集を発行できるだけの数を制作し、連歌集を発行した。クロアチアのミミカとも連歌を制作した。

with Clemente Padin.jpg
ウルグアイのClemente Padinとのコラボレーション

1999年だったろうか、カナダのマニトバ図書館でコラボレーションアートによるアーティストブックフェアが開催された際には、私のすべてのコラボレーション小冊子が展覧された。

with David Stafford.jpg
オーストラリアのDavid Lawrence Staffordとのコラボレーション

with Elaine Rounds.jpg
カナダのElaine Roundsとのコラボレーション

5.メールアートに使われる手法

 メールアートは郵便を使って直接相手に送る以外にはルールらしきものは何もないので、様々な手法が用いられてきた。しかし、それでもメールアートのネットワークでよく使われる手法があるので、以下に紹介する。

(1)エターナルネットワーク
 一つの紙面に複数の人によって表現が重ねられつづけるコラボレーションアート。瞬間瞬間の姿はメールを受け取った者しかみられない。実際には一種のイベントとみなす事ができる。

(2)アーティスト・スタンプ
 切手の形をとったアート。あるいはフェイクの切手。郵便の多くは国有化されている独占業務。これを私製することで何らかの意味がでる。政治的なメッセージをもつものも多い。

ジョンヘルドジュニア切手シート.jpg
アメリカのJohn Held Jrから送られてきた切手シート

(3)ラバースタンプアート
 ゴムのハンコによるアート。ペタペタ押すだけで気軽にアート。だが、結構ハイレベルな作品も多いから侮れない。アルマンのラバースタンプアートは有名。

(4)アッセンブリング・マガジン
 オリジナルの限定部数の作品パッケージ。参加者は指定部数のエディションを制作、版元に送ると参加者の作品すべてがとじられたパッケージが届く。

そして、なによりネットワークとして結びつけられるコミュニケーションアートであり、著作権を否定しているところがある。メールアートは、アート界のリナックスなのかもしれない。
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なぎ猫

Guillermo Deislerさんの本、素敵。シンプル イズ ベスト
by なぎ猫 (2011-03-21 23:09) 

ナカムラ

なぎ猫さま:そうなんです。油絵具で描いてあり、中身は各地の風景の絵葉書なんです。

生前は凄い人とは知らず、亡くなってから南米の文化人たちからメールをもらい、その業績を知り、チリには彼の記念館ができました。彼からもらったオリジナル作品を1点寄贈しました。この本は記念に手元に残してしまいました。
by ナカムラ (2011-03-22 19:39) 

SILENT

ウクライナのメールアート作家さんとの縁も何か不思議なものと思う最近です。メールアートの歴史分かり易いです。最近はメールと言えばe-mailのことですが、メールアートもe-mailで送られる頻度たかまるんでしょうね。
by SILENT (2011-03-25 11:43) 

ナカムラ

SILENTさま:そうですね、最新のメールアートプロジェクトは告知をフェースブックで行っています。現物を送ってもらうように告知していますが、まずはデジタルで送られてきます。

でも、現物のもつ存在感にはかなわないですが。

ハガキありがとうございました。上野広小路の「めぐり」の展覧会に展示されています。昨日ランチに伺いみました。まだ20枚くらい。これからどんどん増えてくるでしょう。いつもご参加ありがとうございます。4月15日まで展示しています。呉服屋の「鈴乃屋」の2Fです。
by ナカムラ (2011-03-26 11:48) 

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